《MUMEI》

「ちょっと‥! ひーなーたっ、痛いってば放してよッ」

「逃げないって約束するなら緩めてやる」

「──何よそれッ、冗談じゃないわよっ。何であたしが日向の言う事聞かなきゃならないのよっ」

「離れたくないって言ったの那加だろ?」

「それは前の事でしょ!?」

「今は違うのか?」

「〜〜〜〜〜っ‥」





那加はふるふると体を震わせながら、

真っ赤になった顔をクッションで隠す。





「‥‥‥逃げないから緩めて」





甘い声で、

囁く。





「──逃げないから」

「分かった」





俺は、

すぐに腕の力を緩めてやった。

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