《MUMEI》 「口閉じててよ」 「ハイ‥」 調子に乗り過ぎたかな‥。 「ひなた」 「はいっ‥」 「──ありがと」 小声だったけど、 この静かな病院で聞き取るには十分だった。 那加が、 俺にお礼を言ってくれた。 「ちょっと、何か返事しなさいよ」 「ぁ、ぁぁ‥」 「『ぁぁ』って何よ、素っ気ないったらないじゃない」 「こ‥光栄に存じます‥姫サマ」 「台詞ガチガチじゃない」 「スイマセン‥」 「──ふふっ」 「那加‥?」 笑った‥? ──笑ってる‥。 那加が── 笑っている。 前へ |次へ |
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