《MUMEI》
「お嬢様とかわってほしいと言われたんですが、今は…って申し上げたら、お見合いは何時ころに終わるかだけを聞いて、お切りになられました」
「…そう……」
カツヤ
久しぶりに名前を聞いた気がする
あれから、まともに話をしていない
メールや電話が何回もきた。
けど、全部返すことができなかった。
あのとき―――
『あの子、誰?』
――と、聞いたこと。
思い出すだけで恥ずかしくなる。
あたしに、あんなこと聞く権利なんかなかった。
ただ、カツヤを困らせただけで。
何も言わない、言ってくれないカツヤにいらついて。
よけい、みじめになって。
あたしは、カツヤのなんなんだろう……
本当に、ただの幼なじみ…なのかな、
「お嬢様?」
ふいに呼ばれて我にかえる。
「あ、うん、ごめん。何?」
「かけなおしてあげたほうがよろしいんじゃないですか?と。」
「あー、うん、わかった。ありがとう、まきちゃん」
「いえ…」
あたしは自分の部屋に戻った。
携帯は、電源を切って引き出しの中に入れた。
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