《MUMEI》

「──はい、半分食べたから」

「‥ぁぁ」





那加──

まだ食べれそうな感じだけどな‥。





「ひなたぁ」

「?」

「何でもない」

「そう‥か」





何か言いたげだな──

と思いながら那加を見る。





那加はひまわりのケージを覗き込んで何かをぶつぶつ呟いていた。





「どうかしたか?」

「───────」

「那加?」

「どうもしてないもん」





思いの外可愛い声で、

返事が返ってきた。





特に何かある感じでもなかったから、

俺はそれ以上は聞かなかった。





開け放した窓から、

一枚、

ひらりと舞い込んだ花びらが、

自分の髪に付いた事に──

那加はまだ気付いていない。

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