《MUMEI》

「もう準備出来たのか!? 速いな……」

「当然だ。」

話を早々に切り上げてヴァンは準備に入ったのだが、それに要した時間はものの数分。ディンは、遠出だし大変そうな依頼だし速いといっても最低十五分はかかるだろうと踏んでいた為驚いてしまったのだ。

ヴァンは長距離移動用の大型鉄騎を所持している。しかもそれはヴァンの為に大幅にカスタムされた専用機だ。中で普通に生活出来るような設備もあるので、鉄騎と言うよりは『移動可能な小さな家』とでも言った方が近い。

今回は依頼者であるディンが鉄騎で来たのでそちらに乗るという手もあったが、帰りを考えるとやはり自分の鉄騎を使った方が良いとの判断が下された。

ちなみにディンの鉄騎は、燃料の無駄遣いになるのでヴァンの鉄騎で引っ張り、ディンはヴァンの鉄騎に乗ることにした。

「では行くぞ。」

「ヴァ〜ン! 待ってよ〜!」

出発を促したヴァンに返事をしたのはディンではなかった。ヴァンは疲れた顔で声の方向を見た。

「……何だ、じゃじゃ馬娘。」

「ぶー! ルキアじゃじゃ馬じゃないもん!」

否定出来ないだろう、という心のツッコミがルキアに届くことはない。

いつもならもっと食い下がってくる所だが、意外なことにルキアが話を切り上げた。

「っと、そんなのどうでもいいや。ヴァン!」

ルキアの反応といきなりの大声にさすがのヴァンも少し驚いてしまった。

「行ってらっしゃい! 気をつけてね! ケガしちゃヤだよ!」

ヴァンは無反応だ。ルキアは、怒ったのかと不安げにヴァンの顔を窺う。

ルキアの心配は杞憂に終わった。

ヴァンはルキアの頭をとても優しげに撫でてきた。ルキアは最初こそ驚いていたが、すぐに「えへへ〜」と嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

「……要らん心配をするな。お前はいつも通り土産を期待して待っていればいい。」

「うん!!」

こうして、ヴァンはルキアに見送られながらエデンへ向けて出発して行った。

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