《MUMEI》
起床
「先生、起きてください。呼びにきてますよ」

遠い意識の向こうでそんな声が聞こえ、羽田はゆっくりと目を開いた。
すぐ近くに凜の顔がある。

「あ、おはよう」

言いながら羽田が体を起こすと、凜は薄暗がりの部屋の入口を指差した。
寝ぼけた意識のまま、そちらへ顔を向ける。
そこには姿勢を正した男の姿があった。
彼は軽く会釈をして笑みを浮かべた。

「おはようございます」

「あ、おはようございます」

つられるように会釈を返しながら羽田は目を瞬かせる。
よく見ると、男はここまで羽田たちを案内してきた隊員だった。

「三階の食堂で朝食をおとりください。その後、準備が出来次第作戦室まで来るようにとのことです」

「作戦室って、昨日の部屋ですか?」

羽田が聞くと彼は頷いて答える。

「わかりました」

羽田が頷くのを確認して男は素早く部屋から立ち去って行った。

「今、何時?」

「四時前ですね」

凜が答える。
羽田は大きく息を吐いた。
寝る前はそうも思っていなかったが、かなり疲れていたらしい。
体が重たい。
それでもゆっくりしてはいられないと羽田は立ち上がった。
二人は簡単に身支度を整えると食堂へ向かって廊下を進んだ。

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