《MUMEI》 新しい……恋愛の話は苦手だったが、あっさり観れた。頭からつまらないと決め付けて眠ったのは申し訳ない。 マイマイが演じた役にはとても同調出来た。 突然、新しい父親が出来て戸惑うところは俺も経験があるからだ。 高遠演じる義兄は新しい妹に恋心を抱きつつも悩みを聞いて理想だった『家族』を創ってゆく。 しかし、彼の理想は義妹の愛しさには無意味だった。 苦悩と葛藤、純粋な好きという気持ちが込められた作品だ。 「どう?起きれた?」 高遠が静かに囁く。 「……いい作品だった。」 気の利いた言葉は俺の性格上、出なかった。 「監督がいい人だったから。人柄がよく表れてる。」 かなり、大胆な露出シーンもあった。それだけ信頼出来る相手だったに違いない。 「……暗いうちに出ようか」 今、感動の嵐の中で涙を誘う張本人に出くわしたら皆パニックだろう。 本人自体は自覚が薄いようだがそれだけ影響力があるのだ。 「お腹空いたね。奢ってちょーだい。」 高遠がポップコーンの薫りを嗅ぎながら言う。 「逆だろ、フツーは。」 俺のバイト代なんてこいつの映画主演料に比べたら雀の涙ほどにしかならないだろう。 「所持金30円だけど?」 少なっ…… 「基本奢らないから。払うのは返してもらうためだから。」 「……けちだ。」 俺が悪いみたいな言い方するけど、そっちこそ稼いでるくせに。 「普通逆だろう、俺が休み返上したバイト代より儲けてるくせに。」 「色々あるんだよ税金とかさあ。」 それらしい話でごまかすつもりなのか、高遠はわざとらしいため息をする。 「俺、そういう大人ぶるの嫌いだな……」 「あ、俺も。」 ……白々しいっ……! 「……今月は出費がかさむな……。」 「貯めてるの?若いうちは使いたくなるものじゃないの、恋人居たら何かとかかるでしょ。」 「基本自宅だし。」 「彼女カワイソー……」 「いいんだよ、大学入ったら一人暮らしするから。」 それに破局しかけてるからなっ。 前へ |次へ |
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