《MUMEI》

「‥ぇ」





俺は、

開いていた本から目を離して那加の方を向いた。





「那加‥?」

「あたし──まだここにいなきゃダメなの?」

「───────」





回復はしてきている。





食事も、

だんだんと普通のに戻りつつある。





──けど。





那加の病気は心にある。






まだ、

他人との接触を恐れている那加にとって、

町中や学校といった場所での生活はまだ難しいだろうと──

戸田先生は言っていた。





「ゆっくりで、いいんじゃないか‥?」

「ぇ‥?」

「焦らなくても、那加はちゃんと退院出来るから」

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