《MUMEI》

「──お迎えに上がりました、姫サマ」

「‥‥‥‥‥‥‥」

「姫サマ‥?」

「‥ひなたぁ‥」





その直後、

わっ、

と那加が泣き出した。





俺は、

きつくその華奢な体を抱き締めた。





もう、

どこへも逃げないように。





「‥帰ろう。一緒に」





俺は、

那加の耳元で囁いた。





那加は、

肩を震わせながら‥

何度も頷いた。





「‥ひなた‥」

「?」

「ごめん‥」

「──無事なら良かった」

「‥?」

「那加が無事で良かった」

「‥‥‥‥ばか‥」

「ぇ」

「‥怒りなさいよ‥」

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