《MUMEI》 俺達が病院に戻って来たのは、 午後7時を回った頃だった。 自動ドアを潜るなり、 佳代子さん達が出迎えてくれた。 「お帰りなさい」 向けられたのは、 思いの外優しい笑顔だった。 「良かった──戻って来てくれて。お疲れ様、日向君」 「いえ──」 本当は、 もっと早く那加を見つけるつもりだったんだけど‥ かなり手間取ってしまった。 「‥?」 那加は、 俺の背中を盾にして隠れてしまっている。 そんな那加に近付いたのは、 佳代子さんだった。 「──お帰り那加ちゃん」 「‥‥‥ただ‥いま‥」 那加は、 やっと顔を覗かせた。 前へ |次へ |
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