《MUMEI》
ありがたくないBirthday
「秀幸、50歳おめでとう!」
「あ、ありがとよ…」
二人でちょうど良い大きさの真ん丸ケーキに無理矢理ローソク50本。
無理矢理ローソクぶっ刺したのは言わずもがな裕斗。
どうせやるなと言ったって聞かないのは分かっているからいつもの如く放置した。
自作の鼻歌歌いながらそりゃも〜嬉しそうにぶっ刺していたさ…。
ローソク同士がくっつきすぎてライターで付けるのに四苦八苦。
アチいアチい言いながらローソクに火を燈したのは俺。
面倒な事は一切合切俺の仕事。
うちの奥さん(♂)は楽な事、楽しい事担当……。
俺は面倒な事、いじめられる事、担当。
▽
ローソクのせいで無残にぐずぐずになったケーキを交互に口に運びっこして食べていく。
−−決してラブラブで食べさせっこしてる訳じゃねえ…。
切りわけたらナイフを洗うのが面倒、皿を洗うのが面倒。
裕斗はいつもそうなんだ。
インスタントラーメンは必ず鍋ごと食っている。
「秀幸プレゼント」
「有難う、なんだろーなあ…」
やっぱりこの年になったってプレゼントは嬉しい。
笑顔とともに受け取ったプレゼントの包装を丁寧に開けていく。
「………」
「ふふっ、内緒で注文してたの、
ロン毛のヅラ」
今年流行りのレインボーカラー、ロン毛、俺に合わせてくせっ毛なヅラ…。
裕斗は俺の手元からヅラを奪い
俺に被せた。
「似合うよ…、カッコイイ…」
うっとりしながら言って、チュッと俺の頬にキスをしてくる。
30を過ぎても若々しい裕斗。出会った頃は焦げ茶色だった髪の色が自然に明るい茶色になってきただけで当時とほとんど変わっていない。
いや、あの頃からしたら目茶苦茶色気が増してるか。
それに比べて俺は髪が薄くなった。
恥ずかしいが世間に隠れてズラを付けている。
でも裕斗はそんな俺でも昔と変わらなく愛してくれている。
「大切に使うよ、有難う、裕斗…」
「よかった…、凄く似合う、愛してる、秀幸…」
ズラをつけたまま俺達は深く唇を重ね合った。
−−−流行りのレインボーか…
フフッ、ちょっとは若返りできるかな?
うちの奥さんが元モデルでよかった。
じゃなきゃレインボーヘアーが流行ってるなんてちっとも知らないでしまったもんな。
よし、明日久しぶりに佐伯に会うしこれをつけていこう!
▽
「…秀幸?」
「うぁあ!…ゆ、夢か…?」
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