《MUMEI》

「挿し歯だね。」
アラタは唇を指した。



「折れた歯は見付からなかった」
篝は口を開ける。
「発見に向かわせた奴が口裏合わせて警察に上手いこと話したってさ。」


自転車で後ろから轢かれ、殴られた。
三日間で八人。
他六人も似たような手口、しかし沖島だけは違った。

全身を鉄パイプでかなりの時間を意識が残るように打たれてた。

「死んだかと思った」
アラタは篝の足を蹴る。

「  痛っ……
心配かけてゴメンなさい。看病は?」



「は?図々しいよ。
守れないくせに。」
アラタは睨みつけた。



「出来る!
すぐ直るって言っていたから、お願いします。
捨てないで」
篝は泣きそうになる。


アラタも篝が不安定なのは気がついてはいる。


だからといって同情はしない。優しい言葉なんて、幻想だ。
耳に入る振動でしかない。
篝は重傷なのに、アラタの部屋へ来た。

何を期待しているのだろう?

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