《MUMEI》

「二郎、憂いてる。」


「うれい?」

久しぶりにそんな難解な言葉を聞いた。


「二郎は知らないうちに人を呼び付けてるから気をつけて。」

なんだか叱られている気分だ。


「……俺、おかしいんだ。七生のこと忘れたのに知っている気がする。
七生の婚約者さんが七生のことを話していると違うって否定したくなる、俺は何も知らないのに。」

今まで引っ掛かっていた違和感。
口に出してみると余計に違和感が広がる。


「矛盾してるって、思ってるな?」


「うん。」


「俺はもっと矛盾した事考えてる。」


「うん?」

乙矢の長くて大きい指が俺を引っ張る。

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