《MUMEI》
「…はぁ…」
「早く起きろよ、朝飯出来てるぞ」
目の前の裕斗は焦げ茶色の髪色。
どうみてもあどけない顔。
「…お前いま何歳だ…」
「はあ?20だろ、
何だよねったんねーのか?ほら冷めないうちに食って!今日は早いんだろ?」
▽
テーブルにはご飯、俺の好きな豆腐とワカメの味噌汁、裕斗の大好きな納豆、昨日のつまみの残りのキムチと一緒に焼いたタマゴ焼き。
しかも全部個人個人に別々の器に盛りつけてある。
「皿別々だな…」
「は?何言ってんの?」
箸も別々。裕斗は先に食べ始まった。
▽
「なー、モデル視点からしてよー、13年後レインボーなヘアカラー流行ると思う?」
「…ありえねーだろそれは…、あ、おかわりは?」
「いや、…いいっす」
先に食べ終えた裕斗は機敏な動作でフライパンを洗いだした。
「面倒だと思わん?」
「何が」
「洗い物」
「は〜?これ位なんでもねーよ」
俺が食べ終えたのを見つけた裕斗は俺の器も下げて手際よさ気に洗いだした。
「あ、そうだ、ケーキ食う?昨日持ってきたんだった」
「あ、食うか…、ちょっと糖分取っとくか」
▽
出てきたのは二等分に分けたケーキ。
別々の皿
二本のフォーク。
裕斗は自分の分を食べながらテレビを見ている。
何気ない日常。
何気ない光景。
「な、もしよ、俺がハゲたらどうする?」
「笑う!」
「あ〜そう…」
即答されてしまった…。
「なんで?気になってんの?」
裕斗は身をのりだして俺の髪に触れてきた。
ちょっと擽ったくて、仕草が気持ちよくて、思わず腰を抱いてしまう。
「大丈夫だろ?」
「うん、剛毛な天パーがビッチリ生え揃ってるよ」
そう言って俺の頬にキスをしてきた。
俺はそのまま抱き寄せて、唇を奪った。
▽
「もし俺がハゲたらお前は俺にレインボーのヅラをプレゼントするのか?」
「は?何だよそれ…」
「洗い物面倒じゃなかったか?」
「だから面倒じゃないって」
「ケーキ切り分けなきゃ洗い物減ったのに、食べさせっこしたらフォーク一本で済んだのに…」
「はは…、秀幸…
変なの〜」
柔らかい焦げ茶色の髪
綺麗な深い色の瞳。
どんな裕斗でもいい、13年後も一緒にいたい。
もし13年後俺がハゲていたとしてもそんな俺を受けいれて一緒にいて欲しい。
レインボーのヅラも受けいれるから。
洗い物は俺が引き受けるから。
END
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫