《MUMEI》
商店街?
「じゃ、まず俺から」
斧を持った少年が一歩前へ出た。
そして手の斧をユキナに向ける。

「ま、待てよ!」
ユウゴが叫んだ。
しかし、少年は気持ちの悪い笑みを浮かべて、走り出す。
思わず、ユウゴはユキナの前へ飛び出して彼を止めようと手をのばした。
その瞬間、体全体に衝撃が走る。
そして……目の前が真っ暗になった。

周りの音も何も聞こえない。
やけに体が重い。
斧で撲られたのに、痛いわけではなく重い。

何故だ?痛みをそれほど感じない。

ユウゴは一度瞬きをしてみた。
やはり、何も見えない。

……いや、違う。
ユウゴの上に誰かが乗っているのだ。

「な、なんだ?」
声が出る。
ユウゴは自分がまだ生きていることを確認した。

そして、そのユウゴの下には苦しそうにもがくユキナの姿。
「あ、わり。どきたいんだけど……。つか、何が起きたわけ?」
「し、知らない。マジで重いんだけど。死にそう」
「んなこと言われても。こいつが邪魔で……。てか、こいつ、誰だよ!」
ユウゴは身動きとれない体を無理に動かし、なんとか体勢を変えて、上に乗っている何者かの顔を見た。
「……あ!こいつ」
その誰かは、さっきまでユキナを殺そうとした斧の少年。
「えぇー?なんだよ、わけわかんねえ。ここ、商店街だろ?」
「だから、そんなの知らないってば。とにかく早くどいて!」
ユキナは自力で抜け出そうと、ユウゴを押し始めた。
「バッ!やめろ、わかった、どくから、ちょい待て!」
ユウゴはそう言いつつ、今の状況を把握しようと目を動かした。

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