《MUMEI》

「凪、おかえり」


公園で、泣きはらした顔を洗って、息を落ち着かせて帰宅した。


たぶん、泣いたのはバレてないはず…


「ただいま、父ちゃん」


「社長さんがいらしてるよ。」


「え?」


「今母さんと涼子が話してるよ。行ってごらん…あ、」


父ちゃんの顔が近づいてくる。


頭を優しく撫でながら、父ちゃんに言われた。


「目、戻してから行きなさい。」


「目?」


ふっと笑みを落として、父ちゃんは調理場に戻って行った。


(目なおせ、って……げ!)


廊下の鏡に映る顔を見てびっくり。


(目、真っ赤じゃん)


父ちゃんは何も聞かなかったけど…たぶん、気遣ってくれたんかな。


(…ははは、ありがとう、父ちゃん)




ばあちゃんの部屋に行くと、中から楽しそうな声が聞こえてきた。


ふぅ、と深呼吸をし、ふすまを開けた。

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