《MUMEI》 『川崎…………。』 その地名を耳にするや、兼松は静かに唾を飲んだ…。 兼松の記憶のベクトルが、6年前のネオン街の情景を照らしだした…。 ゚・:*:.。*。.:*:・゚*゚・:*:.。*。.: 6年前… 加奈子が居た賭場が襲撃を受ける前日… 川崎市街のネオン街の一角にある、薄汚いホテルの部屋で… 『…ハァハァ…』 全裸の男が革のベルトを肩にかけ、汗だくの背中をゼエゼエと弾ませていた。 『…松の字ィ…… 子安の土地は、どんな案配だ…? …ハァハァ…』 このころ兼松は、"笠松"という偽名を名乗っていた…。 多くの偽名を使い分ける詐欺師と、長く付き合いのある裸の男は、兼松のことを「松の字」と呼んでいた。 前へ |次へ |
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