《MUMEI》
・・・・
 昨日、食料調達の順番を決めた。それは単純で三人のローテーションだ。そして今日は俺の日。食材を売っているのは三か所ほどあるが行く場所は決まっている。二人が作ってくれた料理をつつき、俺は宿を出てきた。
 「さってと、市場って遠いんだよな、ここから」
 俺たちが宿をとっているのは王都でも東の外れで、市場とはちょうど正反対だった。
 王都には自分たちを貴族と名乗る奴等の屋敷が建てられているクソみたいなところと、平民と呼ばれる俺たちが住んでいる地区がある。この王都にやってきてそれなりに長いが、俺はあまり地理に詳しくないから王都の構造を把握しきれているわけじゃない。知っていると言えば今向かっている市場と一昨日まで住んでいた俺の家ぐらいで、俺のここでの生活は充実しているとは言えなかった。一昨日まで住んでたささやかな家だってほんの少し前に、やっとのことで借りることができた俺にとっては大事な家で、財産だった。

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