《MUMEI》
尋問
(初めて来たな…)


一年女子の試合がハーフタイムに入った時点で、俺達は一番近い空き教室


音楽室に来ていた。


ハーフタイムは五分しか無いが、俺達は、後半を観るつもりは無かった。


「どういう事か説明してくれる?」

「別に、いいけど…」

「『けど』何? やっぱり二人には何かあるわけ!?」

「いや、別に無い、けど…」

「何でそんなに歯切れ悪いの!?

祐也らしくない!」


(いや、そんな事言われても…)


俺は、素朴な疑問を口にした。


「何で、お前がそんなに興奮して、質問してくるんだよ」


(志貴ならわかるけど…)


志貴は、意外に冷静で、音楽室に入ってから、まだ一言も発していなかった。


今俺を問い詰めているのは、俺と志貴が体育館からここに移動するのを見て、慌てて追いかけてきた





厳、だった。


厳は、俺と奈都のやりとりを、松本と石川と一緒に見たらしい。


そして、二人と別れ、俺と志貴と合流し


今に至っていた。


「ちゃんと答えて!祐也!」


(ストーカーの事は言えないしな…)


奈都から、ストーカーの事を知られたく無いからと口止めされた俺は、説明に困っていた。

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