《MUMEI》

「え…な、なに……」


「凪…好きだ」


「す、…え…へ?……」


(何て、言った…?今、カツヤ…何て……)


「カツヤ…」


「…きだ、すきだ、」


何度も何度も言うカツヤ。言うたびに、抱き締める力が強くなる。


あたしは、わけがわからなくて、抵抗する力が抜けてしまった。




「カツヤ…顔、見せて」


あたしがそう言うと、カツヤはゆっくりあたしを解放した。


顔が見えて、目が合った。

「…カツヤ、自分が何言ったか、わかってる?」


「…」
無言で頷くカツヤ。


「あんた…あたしのこと、好きだったの…?」


真剣な表情。
そして頷く。


「っ…う、うそだっ!」


あたしの言葉に、カツヤの顔つきが変わった。


その顔が怖くて、あたしはパニクった。


「カツヤ、あたしのこと嫌いって言ってたじゃんっ…!避けたくせに…何も言ってくれなかったくせに……何で、そんな嘘つくんだよ…!!もうやめろよ…これ以上、あたしを振り回すなよ……っ」


また泣いてしまった。


「……っカつく…」


へ?と同時に、怒鳴られた。


「いいかげんにしろってのはこっちの台詞だ!!振り回すな!?それも俺のだ!!!」


目がてんになった。
だって、あのカツヤが…いつも静かなカツヤが…大声出して、怒鳴ってる。


「なんなんだよ!?俺がいつ嫌いっつったんだよ!!ああ!?散々言ってんのにまだわかんねーのかよ!!大体、嫌ってたのも、避けてたのもおまえだろ!?」

「あたっ、あたしは、カツヤが避けてたから避けただけだよっ…」


「俺は避けてねー!!」


「避けてた!!」


なんだよこれ…
意味わかんねー……


「だっ、だって、カツヤ言ってた……クラスの男子に、好きじゃねーって…っ」

「…いつだよ。」


「しょう、6のとき…」


聞いたとき、本当に悲しくて。


次の日から、カツヤは何となくあたしのこと避けてて…


だから、………






「おまえ、その会話全部聞いてたのか?」


「へ?」

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