《MUMEI》 「ぇ‥」 そんなに枕ぶつけたかったのか‥? 「日向、早くジュースちょうだい」 「ハイ‥姫サマ」 ボーッして突っ立っていた俺は、 紙パックを渡す事を忘れていたらしい。 「ねぇ日向」 「?」 「もう──桜終わっちゃったね」 「ぇ」 俺は、 窓を見た。 下の方では、 確かに花びらが散った、 若葉が芽吹き始めた桜があった。 「夜の内に散ったのか──」 「──別にいいんじゃない?」 「ぇ」 「葉桜も、悪くない──でしょ?」 那加は、 俺に笑いかけた。 桜のように、 頬を染めて。 前へ |次へ |
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