《MUMEI》
自己嫌悪
 後悔したのは市場の前にやってきてからだった。市場の入り口で立ち止まり、唇を噛みしめる。彼自身もあの事態を受け入れることができないでいる。突然の衝動に駆りたてられ、それを抑えることが出来ず暴走が起こった。
 弱い心に必死の説得を開始する。罪を軽くするため、誰も許してくれないとわかっているから、自分自身で弁護し、慰める。
 仕方なかった、みんなが見て来ているんだ。抑えられるわけがない。自分のことは自分がよく知っていて、あれは間違いなく俺の意思に関係なく起こったことだ。俺も被害者の一人・・・・・・・・・。

 「・・・・・・・・馬鹿か、完璧な加害者だよ。俺は・・・」
 意地汚い自分に嫌気がさし、ファースは重たい心と体を市場へと運んで行った。

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