《MUMEI》
柱
だんだん目が馴れてきたのか、ぼんやり辺りの様子が浮かび上がってきた。
しかし、やはりはっきりとは見えない。
わかったことといえば、ここがさっきまでの商店街ではないということ。
ユウゴの上に乗っている少年のさらに上には、なぜか、長く太い柱が乗っている。
「い、よっと」
ユウゴは力を入れて、なんとか少年をずらしていく。
少年を触った手がヌルっとした。
暗闇のせいでよくわからないが、その臭いから血であるとわかる。
「こいつ、もしかして死んでんのか?」
ユウゴが言いながら、少年の首元を触る。
「死んでんの?」
囁くような声でユキナは聞く。
「いや、生きてる。けど……」
虫の息だ。
「とにかく、今は、かまってられねえ」
「……うん」
「どかすぞ」
「ちょっと待って!」
突然、ユキナが叫んだ。
「なんだよ?早くどけって言ったり、待てって言ったり」
「だって、そいつどけたら、上の柱が落ちてきたりしない?」
ユキナの目はユウゴと少年を通り越して、柱を見ている。
「……平気だろ」
ユウゴも柱を見ながら答る。
「ほんとに?」
「……他に手はない」
「あ、そ。わかった。なら早くして。もう限界」「勝手な奴だな、お前。……いくぞ!」
ユウゴは「せーのっ」と掛け声をかけて少年の体を横に落とした。
同時に二人は目を閉じる。
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