《MUMEI》

「──ひなたーっ、起ーきろーっ!」

「‥!?」





何だか‥

物凄くベッドが揺れているような気が‥。





「起きてってば日向っ」

「ハイ、ぃ‥今起きマス‥」





俺は、

やっと体を起こした。





「ほらっ、早く着替えてご飯食べて」

「‥ハイ‥」





言われた通り、

俺は支度を済ませた。





「──よし、っと‥」

「忘れ物ない?」

「ぁぁ」





‥そういえば──‥。





「那加、昨日言ってた命令って──」

「ぇ」

「命令──まだ聞いてなかったから」

「‥‥‥‥‥‥‥」





那加は、

何故か黙り込む。





「行く前に抱っこして」

「ぇ」

「早く」

「──ハイ‥」





華奢な体を、

そっと抱き締めてやる。





「‥行って」

「ぇ‥?」

「‥ほら、遅刻しちゃうでしょ。早く行って」

「ハイ‥。行って参りマス、姫サマ」





寂しがり屋で、

甘えん坊。





悪戯好きで、

恥ずかしがり屋。





那加は、

いつだって俺を惑わせる。





俺は、

そんな小悪魔な姫の召使。










    ‐完‐

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