《MUMEI》

「樹がバイト休んで遊んでくれると思わなかった」
若菜が眩しく笑った。

「本当はちゃんとした物あげたかったんだけれど。」
樹はドリンクを手渡す。


「樹と居たっていうこの一瞬一瞬の時間の方が私には大切だから。
私、超ごきげんだよ!」
若菜につられて顔が緩んだ



「若菜……」

「なあに?樹、」

「呼んでみただけ」
幸せだと口に出してしまいそうで言葉を飲み込む。
表現してしまうより、心の中で想っていたほうが、高尚だ。

「なにそれ!」
小突いてきた彼女の肘の擽ったささえ樹にはかけがえのないものだった。

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