貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
抜け道。
作戦は案外簡単に進んだ。

父がまだ帰宅してなかったのが幸いしたのかも知れない。


「ただいま」

ごく普通に家に入る。

母は晩ご飯の準備で、わたしにまで気が回らない様子。



部屋で、通帳といくつかの荷物をカバンに詰める。


そしてアキに『万事快調』とだけ打ったメールを送信する。


返事は直接聞く。



息を整え、部屋を出る。


「予備校に忘れ物したので、取りに行って来ます」

母に向かって声をかける。


「あらそう。いってらっしゃい」

昼間の出来事を根に持ってるのか、母の口調は少しぶっきらぼうだった。


その方が都合が良い。



靴を履いて、玄関を開ける。

いつもと同じ手順なのに、なんて気持ちいいんだろう。



桜なんてとうに散った家の前の真っ直ぐな通りを、わたしは全速力で走った。



駅まで7分半。
そんなにいらないよ。




アキ、

15分もしたらそこに着くから、絶対に待っててね。


笑顔で迎えてね。

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