《MUMEI》 過去の記憶(ある事件生臭い血の匂い、人々の悲鳴、魔物の雄叫び・・ 視界が戻った時は・・魔物の襲撃の時・・ 「はぁ・・はぁ・・とりあえず・・倒したけど・・」 「ドスン」と地響きを立てながら崩れ落ちるオークを見ながら大きく息をつく。周囲には20匹近くの魔物の死骸。そして一人の遺体。 「ごめん・・遅くなってしまって・・」 遺体に向け軽く頭を下げる。 魔物の襲撃があった時間、騎士の多くが巡回に出ており、集団で戦うことが出来ていたのは教会に残っていたごく一部の騎士達だけであり、大半の騎士達は自己判断で個々に魔物の撃退に当たっていた。 彩詩も巡回中であり人々が襲われているのを助けるために戦った。 周囲に魔物が居ないことを確かめ剣を収め、虚空を見つめている屍の眼を閉じてやる。 「ごめん・・」 ぽつりと呟く。 その直後、路地から一人の騎士が出てくる。 「彩!よかった・・無事だったんだ。」 自分を見つけ駆け寄ってくるロア。 声をかけるロアの鎧や槍は血で汚れ、彼女の自慢であった蒼い髪も赤黒く染まっていた。彩詩も同じような姿であった。 「何とかね。ロアこそ怪我は無い?」 ロアが来たことについ笑顔を浮かべる彩詩。 周囲に警戒しながらも再開を喜ぶ二人。 「怪我は無いか?そんなことを私に聞くの?天然ボケの彩こそ怪我してるんじゃないの?」 お互いに顔を見合わせ、 「あるわけ無いよ。」 「あっても無視!。」 「ガン」と手と手をぶつけ合う。 「それにしても・・」 「まったく・・・」 収めていた剣を抜き放つ彩詩。同じように槍を構え直すロア。 「次から次へと」 「キリが無い!」 互いの背後にから襲い掛かってきたレッサーデーモンを一撃で葬る。 「ドシャ」湿った音が響く。それを合図としたかのように至る所から魔物が出現する。数は数十匹・・ 「ロアってば大人気。」 「モテモテだね〜彩」 示し合わせたような言葉に思わず笑いがこぼれる。 「グルルル・・・」 威圧するようにじりじりと距離を詰めていく魔物。 「約束、忘れてないよね?」 表情を引き締め彩に問う。 「もちろん。」 軽く後ろに立つロアに肘を当て、返事をする。 「彩より」 「ロアより」 「「先にロット団長よりも強くなる」」 声を揃え言い放つと互いに魔物へと突撃し武器を振るう・・・ (ロア・・私は・・強くなれたかな?) 槍を振るう親友へ問いかける。聞こえるはずの無い問いかけ・・ 再び視界が暗く染まっていく。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |