《MUMEI》

「で、あいつらはどうしたんだ?」
ユウゴが聞くと、ケンイチは後ろを振り向いて「あそこ」と言った。
見ると、いつの間にか通りすぎていたマンションの出入口から、住宅街に不似合いな格好をした男たちがぞろぞろと出てきている。
彼らはなぜか咳きこんでいるように見える。
「何したんだよ、一体」
「別に。ただ部屋に火をつけただけだし」
「……放火かよ」
ユウゴが呟くように言うと、ケンイチは不服そうに眉を寄せた。
「違うって。証拠隠滅だろうが」
「俺たちがいたっていうことはモロバレなのに、何の証拠だよ?」
ユウゴの言葉にケンイチは口を開きかけたが、すぐにその行為に意味がなかったと悟ったのか、黙り込んでしまった。
その様子を面白そうにユウゴは眺める。
すると無言で運転をしていた織田がふいに口を開いた。
「やっぱり道は塞がれてるな」
その言葉にユウゴが前方に目をやると、道路の先は数台の車で塞がれていた。
その周りには追撃隊の男たちがずらりと並び、こちらに向けて銃を構えている。
「おい、どうすんだよ?」
ユウゴは抜け道がないか視線を走らせながら織田に問う。
しかし、車両ごと抜けられそうな道は見当たらない。

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