《MUMEI》
落とし前
「……」
「……」
「…わかりました。諦めます。」
「…本当に、ごめんなさい。」
「謝らないでください。仕方ないですから。」
「武臣さんには、あたしなんかより、もっと相応しい方が必ずいます…」
武臣さんに、全てを話して、見合いは受けれないと言った。
ばあちゃんと母ちゃんには昨日話をした。
2人とも、あたしとカツヤがくっついたことには何も不満はないが、社長に何とお詫びしたらいいか…とそればっか言っていた。
あたしから直接謝ると言い、ホテル篝火に来た。
社長室で待っていた武臣さんは、全てを察したような顔をしていた。
本当に、申し訳なくて仕方ない。
「でもね、凪沙ちゃん、」
「へ?」
「諦めるとは言ったけど、それは今回に限ってのことだからね」
にやっと笑う武臣さん。
「と、言いますと…?」
「彼と別れることになったら、いつでも僕がスタンバってるからね。いつでも板前になれるように料理の勉強は続けとくからっ」
ピンッとウインクをされ、あたしは笑った。
「あっははは!!武臣さん、執念ぶかいっ!!!はははっ!」
ありがとう、武臣さん。
ごめんなさい…。
武臣さんならきっと、素敵な人に出逢えますよ。
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