《MUMEI》
「最近ぼーっとしてどうしたの!」
背中を打たれる。
「……寝不足でね」
羊の代わりに毎晩雁之助が走り回り、興奮して眠れねぇ。
「まだ彼に未練あるんじゃないの?」
「 え 」
「年下だっけ?」
そうか、幸一のことなんかすっかり忘れてた。
「うん」
声に出して改めて自分に言い聞かせた。
私は、雁之助に会ってからは辛い独身生活から離れられたんだ。
一瞬、会っただけなのにこんなにも、雁之助ばかり想っている。
「会いたいって気持ちを我慢し過ぎたら、
本当の気持ち逃しちゃうよ?……って、
大分前のあんたからの受け売りね。」
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