《MUMEI》
アルバイト募集!!
「このマンションか…」
雄太は一枚の紙を片手に、高層ビルを見上げた。



昨日の午後6時頃、雄太はいつもの様にカフェでのバイトを終え、自分のアパートへ帰ってきた。
―ガチャ―
部屋に行く前に必ずするポストチェック。
毎回2、3枚は入っているヘルスなどのいやらしいビラが、この日は珍しく入っておらず、代わりに一枚のA4サイズくらいの紙が入れられていた。
「なんだろ?」
立ち止まり書いてある文字を読んでみる。
(何々?アルバイト募集。時給は…嘘っ!?一万円?)
この不景気にその時給は余りに魅力的。しかし上手い話には、必ず落とし穴が待ち構えているものだ。
警戒しつつも、時給の良さに気を惹かれる。
どちらにしろ、もう少し詳しい事を知りたいと思い、急いで自分の部屋へ戻った。

いつものお気に入りの場所、二人掛けソファーにドサッと腰を下ろすとさっきの紙を細部に渡って読み始めた。
内容は次の様に書かれていた。
『アルバイト募集!!
仕事内容:家事全般など
年齢 :20歳以上
時給 :一万円〜
食事付き、希望ならば住み込みOK!!
詳しくはTELにて。』

雄太は書いてある電話番号を見ながら考えた。
(家事全般なら得意だ。でも『など』って一体なんだろう?怪しくね?でも時給はいい。良すぎる!一万円〜って事はそれ以上も有り得るんだろ…?)
頭の中で何回葛藤しただろう?しかし悩んでても仕方ないと思い、ズボンのポケットに入っている携帯を取り出した。
「取り敢えず話だけでも聞いて見よう!」
折りたたみ式の携帯を開け、紙に書かれている番号通りボタンを押した。
緊張で少し指が震えているのがわかった。

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