《MUMEI》

…間一髪。ギリギリで海を止められた…はぁ。…白い布地の先っぽを、ほんのちょっとだけ間近で見ちゃたのはボクだけの秘密だ。




「さて…空?覚悟は?」

…あ。空くんが青ざめてる。…!!う…海が魔王に…

「死ねぇぇっ!!」




い…一撃!!…い、生きてて良かったぁ…

「いてて…んで、どうやって使えるようになったんだ?その力。」

えぇぇっ!?早っ!!生き返るのはやっ!!海も怖いけど、空くんもゾンビ的な意味で怖いなぁ…

「全く…んーとね、今朝の朝練で、みんな練習してんの見ながら、“力”ってどんなものなんだろう?って考えてたら、眠くてちょっとだけ寝ちゃったの。その時、夢の中でもう一回真っ暗なとこにいて、声が聞こえたってわけ。」

もう一度あの場所に…?ボク今日昼まで寝てたけどなぁ…。

「へぇ…んじゃあれか?寝ればいいのか?」

「いや、寝るだけじゃないと思うよ?それなら今日ボク午前中ずっと寝てたもん。」

「そういやそうだな。んじゃなんで海だけ?」

うーん…なんでだろう…。

「多分…『自分に与えられた“力”とはどんなものなのか』を考えながら寝るとわかるんじゃない?アタシそうだったし。」




「…なるほど、一理あるな。んじゃとりあえずそれ考えながら次の授業寝るか。な、陸!」

「うん、わかった。」




…おっ、ちょうど授業開始5分前だ。

「2人とも、そろそろ教室行こ!」

「うん!ちなみにね、朝アタシがコンビニいたのもこの力よ?じゃないとあの時間にいけないもん。」

あ…確かに。コンビニと野球場は校内のちょうど対角になる場所にある、角同士だったはずだ。

「なんつーかさ、その能力すっげぇ便利だよな…」

「スカートじゃ使えないけどね。んじゃお先に〜♪」




そう言って海は、先に教室へ飛んでいってしまった。

「…あれさ、あんな簡単に使っていいものなのかな?」

「いや…そんなことねぇだろ、言った先からスカートだし。とりあえず…オレらも戻るか。」

「…うん。」

―――――――――

…とまぁ、こんなことがあったわけだ。

「…えーここが、1:2:√3になることを利用して〜…」

…なんか先生の声が遠くなってきた。次こそボクの力がどんなものか知れたらいいな…じゃオヤスミなさい。

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