《MUMEI》
いらつく頼
「俺はムカついてる」

「うぉ!?」


(びっくりした!)


さっきまで熱弁をふるっていた声と同じ声が別の場所から聞こえた。


「…びっくりした」


俺よりやや冷静な志貴の近くに、いつの間にか頼が立っていた。


「どーもー」


頼は俺達に、軽く頭を下げた。


(何か…怒ってる?)


その口調は明るいが、目は笑っていなかった。


「もしかして、報告?」

「そー」


(何だ?)


俺と厳はよくわからないが、志貴は頼が来た理由に心当たりがあるようだ。


「体育館にいる会員からメール来てさ。

本人、否定も肯定もしないらしいよ。

…本当、ムカつく」


(本人?)


俺はまだ頼が誰の事を言っているのか、よくわかっていなかった。


「直接本人には訊いた?」

「俺、あーいう女嫌い。見た目良くても性格ブスだし。
あんな女の何処が良かったわけ?」


そう言う頼の視線の先には


「え? 何?」


状況を理解出来ていない厳がいた。


(厳に訊くって事は…)


俺は、誰の話か気付いた。


「あの、バスケ部の女だよ」

「あぁ…」


頼の言葉に、厳もやっと奈都の話だと気付いた。

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