《MUMEI》
ペンライト
 パラパラと、コンクリートの破片がユウゴの顔に降った。
ユウゴは片目をそっと開けて、ホッと息をつく。
「セーフ!」
ユキナも安堵の表情を浮かべている。

「それじゃ、早くどいてくれる?」
「ん?ああ、わりぃ」
ユウゴは僅かにできたスペースでなんとか体を起こした。
それでも、ようやく中腰になれるだけの空間しかない。

「あー、今度こそ死ぬかと思った」
ユキナは大袈裟に息を吐き、上半身だけ起こして首を回した。
ポキポキと関節の鳴る音が聞こえる。

「しかし、なんだよ、ここ?この上に乗ってんのって何?」
「さあ。ユウゴがわたしの前に立ったのは覚えてるけど」
「ああ、俺もだ。てっきり死んだかと思ったけどな」
「……ありがとね」
「あ?なにが?」
「だから、庇ってくれて」
「ああ、無意識だ。気にすんな。それより、なんとかこっから出ようぜ」
ユウゴはサラリとそう言って、鞄からペンライトを取り出した。

「あのさ、会ったときから思ってたけど、ずいぶん、用意がいいよね」
「そうか?まあ、どんなゲームか予想はついてたから。逆にお前は明らかに準備不足だろ。こんぐらい持ってこいよ」
馬鹿にした口調でユウゴは言ったが、ユキナは一睨みしてきただけだった。

 ユウゴはライトを点けて辺りを照らした。
暗闇の中、二人の周りだけぼうっと明るくなる。

そして、その明かりの先を見た二人は、同時に息を呑んだ。

「……なんだ、これ」

ユウゴの声に、ユキナも思わず手を口に当てた。

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