《MUMEI》 陸の優しさ…そして約束「お礼…?」 ボク何かしたのかな?いや知らない人に何かした覚えなんてあるわけないし…あ、じゃあボクが忘れてるのかも!? 「ご、ごめんなさいっ!」 そう言ってボクは思いっきり謝った。だって忘れてたらスッゴク失礼だもん…謝んなきゃだよね。 『…?なぜ謝る…?』 「だってボク、君のこと忘れてしまって…本当にごめんなさい!」 …あ、あれ?笑ってる? 『ハハハ…陸は面白いな。大丈夫、安心するがいい。』 『忘れるのも無理はありません…私たちの本当の姿など見たことあるのは、陸様を除いて1人だけですから。』 あれ…?よく見たら陰にもう1人いる。声まですっごいそっくりだったからわかんなかった。 ふと、奥にいた方の女の子が立ち上がって、この木を両手で抱くように触りながら、遠くを見るような目で見つめた。 …あ、よく見たら髪飾りが違うな。良かった…口調以外違いがわかんなくて困ってたんだよね。 『陸様は…この木の本当の名前を知っていますか?』 本当の名前…?この木に名前なんてあったんだ。今まで知らずにご飯食べに来てたな…。 「えっと…すいません、わかんないです。」 そう言うと、立ち上がった少女は微笑みながら静かに語り始めた。 『謝ることはありません。この木の本当の名前は…【岡の大樹】と言います。』 『そうですね…今からだいたい一千年ほど前になるでしょうか。この地は、今は無き不思議な力を持った者たちが寄り添い、集まって暮らす小さな村があったのです。』 …そんな話初めて聞いた。いや、授業聞いてなかっただけかな?あぁ…また謝りたくなってきた… 『その村では、住む者皆が明るく、とても幸せに暮らしておりました。』 『特に、その村をまとめ、皆の心の支えになっていた一人の青年は、誰よりも慕われ、村の女性は皆がその青年を恋しているほどの容姿を持ち、また度々村が危機にさらされる度に機転をきかせ、何度も村を救ってきた英雄そのものでした。』 『もちろん、そのような者を放っておくわけがありません。村の女性誰もが青年の妻になろうと必死でありました。』 『しかし、青年は決して誰も妻をとらなかった。それには、一つの理由があったのです。』 前へ |次へ |
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