《MUMEI》

『数日後、ある兵が領主の命令で消えた2人がいないか探しに、滅びた村の跡地へとやって来ました。』

『一度消えたのだから、いるはずありません。実はこの命令、普段忙しく働いている自分の跡継ぎたるこの兵へのつかの間の休憩のつもりで与えた、偶然の命令だったのです。』

『そうして一通り探したその兵は、最後に2人が消えた場所を見に行きました。』

『すると…不思議なことに、そこにはあの時生えていなかったはずの小さな木が1本生えていたのです。』

『なにか不思議なものを感じた兵は、その木のことを領主に言わず、自分が領主になるまで秘密にしておくことにしました。』

『そして十数年後…領主は死に、新しくその兵が領主となりました。そして一番最初にやった仕事が、あの木に名を与え丁寧に奉ることだったのです。』

『当時2人のそばにいた兵がかろうじて聞いた「……岡………」という呟きから【岡の大樹】、またそこに岡の大樹が根付く場所…【岡根神社】として奉ったのです。』

『しかし、悲しきかな人は忘れゆく生き物です…いつの間にかあの悲しい戦を知るものはいなくなり、元々小さかった木はその存在の意味と名前を忘れられて行きました。』

『結局残ったのは岡根神社という場所のみ…。それが由来となり、いまの岡根市となったのです。』




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