《MUMEI》
「ん〜・・・。私の髪って広がりやすいんだぁ〜。だから髪を下ろすと、バサバサになっちゃうんだよねぇ〜・・・。」
珠美は苦笑しながら自分の三つ編みをちょこんと持ち上げる。
「そんなことならいるじゃんっ!!プロがっ!!」
「そうやんなぁ〜!!湊!!」
都槻と良次はニヤッと笑い、湊汰の顔を見た。
「嫌だよ。ツヅさんがやればいいじゃん。できるでしょ」
ニヤニヤと笑う2人に湊汰は冷たく言い放った。
その言葉にその場にいた珠美以外の人達の溜息が重なった。
「お前なぁ・・・」
「湊くんってば相変わらず〜」
「何言ってんの〜!!あたしよりうまいに決まってんじゃんっ!!」
「お前その自慢の手ぇ使わんでどうすんねん!?」
湊汰はみんなの視線に絶えられなくなったのか、降参、というように読んでいた本を閉じた。
そして立ち上がりながら珠美の方にチラッと視線を向けた。
「ここに座って」
珠美は髪を解きながら、湊汰の指定した椅子に腰掛けた。
「うう〜モハモハしてるよ・・・」
向かいにある鏡を見ながら自分の髪をいじる。
そんな珠美をチラッと見て、湊汰はポーチからハサミを選び取り出した。
「じゃあ始めるよ」
湊汰の手が珠美の少しクセのついた髪に手をかけた。
シャシャッっとハサミの動く音がする。
「う、わぁ〜速い〜!!」
「動かないで」
驚いて頭を動かす珠美を軽く手で押さえる。
湊汰の手は軽快なリズムで有りながら、正確に動いた。
そのスピードであった為、あっという間にカットが終わった。
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