《MUMEI》
「なんでこんなとこに…」
「ん、なんかじっとしてらんなくて…、駅に向かってけば仁に会えるかなって」
そう言うと拓海は俺から視線をそらし、
俺に背中を向けた。
「…、っ、…はぁ…」
「…、拓海?」
肩にそっと触れてみる。
すると拓海は僅かに、本当に微かに、震えていた。
「…俺、おれは……、最低だ…」
「拓海…」
「嫉妬ばかりして、揚句に人まで刺して……、
消えて…
失くなりたい……」
「………」
「…………」
「一緒に、消えるか?」
「…え?」
ふわりと匂う、俺と同じ匂い。
だけど体温は俺よりも少し熱くて…
俺の胸に簡単に収まる華奢な体を背後から、きつくきつく抱きしめる。
柔らかい髪に頬を擦り寄せ、
「消えようか……
もう俺は……疲れた……
自分可愛さに…
嘘をつきすぎた…」
「……じん…」
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