《MUMEI》

そんな悲しいことがこの場所であったをだ…あうぅ。

話を聞きながら、泣き虫のボクは悲しくなって思わず目が潤んでしまった。…い、いや全然一滴もこぼれてないもん!…多分。

「そんなことがあったんですか…。あ、じゃあもしかして…?」

『その通り…私たちが話に出てきた姉妹。私は姉の棗、そこに立っているのが妹の雪だ。』

「棗さんに雪さんか、あの、えっと、よろしくお願いします。」

そう言ってボクは、2人に向けて頭をペコッと下げた。

2人がすごく優しい顔でボクを見てくる。なんだろう…うまく言えないけど、暖かいものにに抱き締めてもらって安心するような気持ち…。

『なんとなく気づいてると思うが、陸のその“力”…それが、村人たちが持っていた不思議な力だ。』

「あ、やっぱり…。」

『このような呪われた力などいらなかったろうに。迷惑ばかりかけてすまないな…。』

…?迷惑ばかりって?

なんだか雪さんが悲しい目で僕の方を見てる。…あれ、なんか見覚えが…。

『私たちは今までずっと孤独だった。来る日も来る日も、ここから動けず…元々力もない私たちは、外に出ることも出来ずにこの一千年を過ごしてきた…。』

そ、そんな…。ボク絶対耐えられないや。さっきの数分で泣いちゃったしなぁ…。

『そんな我らに会いに来てくれる者ができた。それが…陸達なのだ。』

ボクらが…あ、感謝ってもしかして…






「それって、ボクが入学してすぐの時…ここに来たこと?」

『その時から今までずっとです。本当に…ありがとうございました』

『一番最初に来た時の陸の言葉は嬉しかったぞ…なんだかすべて見透かされてるようでな。』

懐かしいな…。ボクがこの木に出会ったのは、実はただの偶然だ。それはボクの入学式までさかのぼる…

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