《MUMEI》

お昼休み、珠美は2人分の弁当を持って、裏庭に抜ける特別塔の廊下を歩いていた。

「ドキドキするなぁ〜!!」

裏庭にいる久我の姿を見つけて、珠美はつぶやいた。

そんな珠美を見つけたのか、久我は手を振りながら大声で珠美を呼んだ。

「お〜い!!珠美!!何してんだよ〜!?」

久我を見て、珠美は胸がきゅっと締まった。

こんなことでゆらいじゃ駄目だ!!

珠美は必死で胸の痛みを隠した。

「うん!!今行くよ!!」

そして、昨日明良に言われたことを思い出した。



「いいか?いつもみたいに裏庭に、昼メシを誘え。そしたら、さり気無く聞け!!」



「やっぱお前の弁当最高うまい!!おい珠美、聞いてんのかよ!?」

珠美はお茶を久我に差し出しながら、おずおずと問いかけた。

「あのさ・・・昨日ここで見ちゃったんだけど・・・。あの女の人達って本当に友達なの!?」

この言葉に久我の周りの空気がスッと下がって、珠美に冷たく問いかけた。

「何?お前疑ってんの?」




「そう聞かれて久我は、無理にでも無かったことにしようとするはずだ。そこを利用するんだ」



「え・・・だって・・・。久我君のよくない噂を聞いちゃったから・・・。」

「そんなのデマに決まってんだろ!!今日の放課後体育館裏に来てよ!!信用してもらえるまで何でも話すからさ!!」




「そう言ったらこっちのもんだ。うまく罠に嵌った!!これで準備完了だ!!」



「うん。わかった!!変なこと聞いてごめんね?」

「いいって!!オレが悪かったんだから!!」

久我は急にハッとして立ち上がった。

「悪い!!ちょっと早めに戻るな!!呼び出されてたの忘れてた!!」

クルッと向きを変えて走り出した久我の顔には、珠美に見せていた笑顔と違う笑みを浮かべていた。

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