《MUMEI》

陸が消え、元の世界に戻ったのを見ながら、残された2人は誰に聞かせるともなく呟いた。

『岡兄…。あなたの力を受け継いだものは、あなたに似てとても心優しい少年だった。』

『…まぁ少々気は弱いがな。あの少年なら…陸なら、きっとこの戦いを止めることが…。』

そうして…残された2人の姿も、気づけばそこには無く、何の音も無くなった世界に、静寂が訪れた。




―――――――――




「う、うーん…」

…あ、チャイムがなってる。授業終わったのかな。次の授業は…

「無いよ!もう…寝過ぎなんだからぁ。ほら、帰るよ陸!」

あ、海だ。…へ?終わり?…あ、またいっぱい寝ちゃったみたいだ。

「ゴ、ゴメン…今準備するから!」

急いで机の中の教科書をカバンに詰め込んでゆく。

「あ、そういえばどうだった!?自分の“力”わかったぁ?」

「あ、うん。いろいろ聞いたんだ…」

そうして、夢で見た一部始終を、手を繋いで仲良く帰りながら一通り話して聞かせた。

「そっかぁ…あの木、岡の大樹って言うんだぁ…。」

…なんだろう。なんか…話を聞いた海が懐かしそうな目をしてる。

「海…?」

「…え?あ…あぁ、なんでもないの!それよりさ、見せてよ!陸の【切る力】!」

「うーん…見せてって言われても…」

使い方なんてわからないし…どうしたらいいんだかさっぱりわかんない。どうしたら使えるのかな?

「使い方わかんないの?」

「う、うん…。」

「多分ね、私と同じなら【切る】って心の中で強く思えばオッケーだと思うよ?」

強く…ねぇ。ボクはとりあえず、足元にあった手頃な石を拾い、心の中で切れろと念じながら、真ん中を真っ直ぐ…真っ二つにするように指でなぞってみた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫