《MUMEI》
神鳥の羽-2
「よぉー、一生、おはよう」

大学の掲示板前に友人を見つける

掲示板には常にその日の休講や連絡事項が記載されているから
朝は確認する学生で賑わう
しかし、今日はやけに多い

「何かあったのか?」

「ん?何やら今日の講義の教授が事故ったらしいぜ、ほらニュースでやってる」

友人は携帯でワンセグを見せてくれた

「うわぁ…酷いな」

画面は、上空からの映像だった、電車の脱線事故だ

「この時間なら、まだ何人か学生も乗っているだろうしな…」

掲示板には記載されていないが、直に連絡が来るだろう

「とりあえず…どうする?」
「休講だろうしな、屋上でもいこうぜ」





屋上からは、2台、3台と空を飛ぶテレビ局のヘリコプターでうるさかった

「おーおー、やべえなあれ」

離れた場所からは、けたたましいサイレンの音が幾重にも鳴り響き、いつも見下ろす街の風景に緊張感があった


「鳴駆、吸うか?」
タバコを一本、出される
「吸わねぇよ、まだ未成年だぞ」
空を見上げる、今日は快晴だ
雲一つ無い
こういう日に散歩なんて気持ちいいんだろうが
騒音のせいでそれも無理だろう

「おーい、俺そこで寝るから、何かあったら起こしてくれ」
「あいよ」

友人は、入り口の屋根の下の日陰に寝そべって眠り込んだ

俺はぼんやりと、慌ただしい街を眺めていた




しばらくして、ふと、光るものが視界の隅に入った

「ん…?」

不意に空を見上げる

それはユラユラと、左右に揺れながら、ゆっくりと俺の手元に落ちた

「これ…羽か…?」

そこには、白銀と黄金の混在した羽が、日の光を反射してキラキラ輝いていた


その瞬間

怒号の様な音が、屋上全体を叩きつける様に響いた

「〜〜〜〜ッッ!?」

俺は、あまりの衝撃に声にならない声を上げる

たちまち夜の様に辺りが暗くなる、それが何かの影であるというのに気づくのに、数秒を要した

再び頭上を見上げる

「…………鳥!?」

はたして本当に鳥だったのか…
しかし、目の前にあるものを形容するのには一番適した言葉だった

「鳥」は、もう一度羽ばたく
烈風が巻き起こり、俺はとっさに身を屈めた


「何やってんだお前」
半ば呆れぎみの友人の一言で、静寂が戻っているのに気がつく
「え…」
手元に違和感を感じる
さっき手にした羽が、雪の様に溶けて消えた

鳥も消え、辺りにはただヘリの駆動音が響いていた

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