《MUMEI》 陸の“力”「…ね、どう?」 海が、好奇心をたっぷりと滲み出した目でボクを見てくる。…しかし、それに反してボクは…。 「切れてない…。」 「あ…えっと、そんなこともあるよ!アハハ…」 必死に海が励ましてくれるも、ボクの心は落胆の一路を辿るばかりだった。 「な、なんで…?」 じゃあ【切る】を操るってなんなんだ…? 「なんでだろう…」 「…。きっと、もっと違う力なんだよ!とりあえずご飯食べて元気だそ?今日は海ちゃんが奢っちゃうぞー!」 そう言って、無理矢理ボクの腕をつかみ近くのファミレスへ引っ張っていこうとする海。やっぱり…気を使ってくれてるのかな。 「…くそっ!」 そう言って、ボクは空いている方の手で、悔しさを滲ませながら石を思いっきり地面へ叩きつけた。 パキッ… …あれ?石って普通こんな簡単に割れるかな? 「り…陸…あれ…あれ見て!」 ちょっと遠くに飛んでいった石の欠片を見て、海が驚いた様子で叫んでいる。何かあったのかな…? 「へ?何…あっ!」 石が…割れている。しかも、キレイに…真っ二つに。これってまさか… 「ちゃんと切れてたのよ!ちゃんと力使えてたじゃない!」 ホントだ…。じゃあなんでさっき…?まぁ、今はそんなことどうでもいいや。だって… 「や…やったぁ!ボクにも力使えたぁ!」 「んじゃファミレスで陸の力使えたよパーティーね!ちゃんと使えたからちゃんと陸もお金だしてねぇ♪」 そう言って海がものすごい勢いでボクを引っ張って行く。…おかしいなぁ、力使えたのにちょっと損した気分だ。 「パーティーパーティー楽しみだぁ♪ファミレスへレッツゴー!」 …海、お腹減ったからファミレス行きたいだけなんじゃ…?…ま、いっか!今は素直に喜んどこう。ボクにも力使えたわけだし! そしてボクらは一緒に…いや、ボクは引きずられたけど…なぜかパーティーをするためにファミレスへ向かった。 ――――――――― これが、このボク加東陸の…悲しい運命を辿る戦いの…後悔ばかりが胸を埋め尽くすような…つらい戦いの始まりだったんだ。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |