《MUMEI》
過去の記憶(魔女と騎士3
意識が半ば飛び、虚ろな意識の中でハンディングの声を聞く。
「天堕ちる者・・我が血を糧にその力を示せ。全てを焼き滅ぼせ、ブラディクロウセル・ウェル・クワト」
4つの紅い雷が全てを吹き飛ばすかのように堕ちる。
自分が叩きつけられた建物へと・・
音は完全に可聴粋を超過し、ただの衝撃波となって周囲を破壊する。
何故生きていたのかは・・今の自分にも解らない。母から貰った短刀が地面に転がっているのに気が付き、手を伸ばす。
「母上・・私は・・」
無意識のうちに声が出る。
しばらくの沈黙、ただ砂塵の奥を、前を見る。口からは血がこぼれ、全身が悲鳴を上げている。
それでも・・何故かハンディングの側に行かなければならないと思った。
「死んだか・・」
小さく聞こえた声に、言葉を返す。聞こえてほしいと願いを籠めて。
「勝手に・・殺さな・・くれ・・な?」
自分の言葉につい苦笑がもれ、痛みが走る。
「馬鹿な・・幻聴か?」
「じゃぁ・・これは幻影・・?」
声が近くに居ることを確認し、ただ進む。
右腕は折れ血が滴り、左肩にも大きな裂傷。左腕も恐らく動きはしないだろう。鎧は各所が抉れ、白銀のはずであった鎧は、血で紅く染まっていた。足を引きずりながらも、ただハンディングとの距離を詰めていく。
「愚かな・・それほどまでにこの街を守りたいか・・そんな満足に剣も振れぬ体になってまで・・」
怯えたように一歩後ずさりをするハンディング。
「逃げ・・い・・よ」
声を出すが、うまく声が出ない。
「何・・?」
聞き返すような声に、言わなければと、力を籠める。
「逃げないで!」
大きく息を吸い、やっとの思いで声を出す。
「逃げてなど・・」
荒く、息をつきながら・・手を伸ばせばハンディングに届く距離まで進む。
「逃げて無いなら・・ちゃんと前を向きなよ。自分が・・それで良いと思った道なら・・どうしてそんなに悲しそうな顔をするの?」
「そなたに・・何が解る!!我は・・我は・・」
ハンディングは声を荒げるが、その声は続かず、ただ首を左右に振るだけになる。いやだ、いやだと逃げるように・・

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