《MUMEI》
過去の記憶(魔女と騎士4
「解らないけど・・聞くことは出来るよ。貴女が・・何を悲しんでるのか・・聞くことくらいは。」
ハンディングを抱きしめようと手を伸ばそうとするが腕が動かない・・苦痛に顔を歪め強引に腕を伸ばす。
なぜ・・抱きしめようとしたのかは・・覚えていない。ただハンディングが泣いているから・・そう思っただけなのかも、知れない。
「我は・・」
ハンディングの頬に手をやり、涙を拭く。
「泣きたいのは・・私だって同じ・・なんだよ・・さっき、魔物に友達が殺された・・だから、貴女の姿を見たときはすごく・・憎かった。だけど・・だけど・・」
言葉にならずただ、涙が頬を流れていく。
倒れこむようにハンディングへと体を預ける。驚いた表情をするハンディングに、頷いてみせ、言葉を紡ぐ。
「貴女の術式のせいで・・大勢死んだ・・けど・・貴女は大切な者を失う苦しみを知っていて・・それを悲しむことができる・・そんなヒトを・・私は斬ることは出来ないよ・・・」
疲れたように、大きく息を吐く。
「辛いのは・・多分同じ。絶望なんて・・しないで前を見てよ・・そうじゃないと・・許さないよ。」
「・・・・我を許すつもりか?この惨劇を起こした我を。」
「今は・・許せない。けど・・貴女を殺したって・・意味は無いじゃない。」
「・・・解った。フィリアス教は憎いが・・そなたの言い分も解る。殺した所で意味は無い・・か。」
小さく頷くハンディングに対して、殺意や憎しみは無くなっていた。
「まだ・・動ける?だったら・・最初に私が居た所まで運んでくれないかな?・・子供と仲間が待ってるから・・守らないと・・」
正直、戦える訳は無いと解っていた。けど行かなければ・・そう思った。
「我が・・代わりに戦う。そなたは休んでいてくれ・・そなたには・・謝罪と、礼を言わなければいけないのでな・・」
そう呟きながら、魔法陣を展開、空間を跳躍する。
(ハンドのお陰で・・私は生きることができた・・)
そうぼんやりと思うと・・視界がまた暗く染まっていく。
この後、ハンディングは騎士たちと協力し、魔物の撃退し、この襲撃を起こした犯人として罪を認め、騎士団へと出頭するが、「証拠が無い。だいたい、あんな大掛かりなこと一人で、できるか!」と言うロットの言葉や共に戦った騎士達の言葉により、死罪を免れ、各地を転々としていた。

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