《MUMEI》
愛は会社を救う(74)
それを聴いた由香里が、真っ青な天を仰ぐ。
「ずっと、憧れでした」
そう言って一つ、大きな溜め息をつく。
「憧れ、ですか」
私はなぜか可笑しくなった。ちょうどあの夜、バーのカウンターで感じたのと同じように。
しかし、今はその理由が全てわかっていた。
憧れという言葉の意味が、あの時言った"社会人としての目標"とは、まったく別の意味だということも。
「でも自分では、理解できませんでした。この気持ちが何なのかも、それをどうしたらいいのかも」
私は再び遠くに目を遣った。穏やかな海面には、まばらに黒い船影が見える。
遠くからでは仄かにしか見えないあれらの影も、近付いて見れば巨大なオイルタンカーであり、貨物船であるはずだ。
人の心の奥底にも、きっとこんな、広大な海原が広がっているに違いない。

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