《MUMEI》

「──ねぇねぇラン」

「?」

「ボクのポップコーンも食べる?」

「ぇ‥?」

「お腹いっぱいになってきちゃったの」





猫撫で声で、

蜜君は勧めてくる。





「お願〜い」

「ぅ‥‥‥」





弱いんだよなぁ‥

こういうの‥。





「‥ちょっとでもいい‥?」

「うん♪」

「‥おい、デカい声出すな」

「分かってるってばぁ」





蜜君は、

だんだん退屈してきたみたいで──

足をブラブラさせたりしてる。





鳳君は、

スクリーンの方を見ながら‥

時々こっちをチラ見する。





私は‥

縮こまって前の座席の背凭れの辺りを見てる。





だって、

スクリーンも鳳君も蜜君も、

どれもまともに見れないし‥。

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