《MUMEI》

直美は鬼畜のような男を睨み返した。



『…笠松さん……とか言ってたわね…?


…アナタの顔は覚えたわ……。』



悔しさを噛み殺し……震えた声を絞りだす…。



『…逃げるなら思いきり遠くに行くことね…。


…さもなくば、落ち着いて眠れないでしょうからね…。』



直美は任侠の道をゆく男の妻らしく、堂々と自らを犯した男と向き合った。



『ほぅ…。儂を威すのか…?』



兼松の眉がピクリと吊り上がる…



その手はゆっくりと、箪笥の上に預けてあった59式拳銃へと伸びた…。

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