《MUMEI》

「呼んでええんならな──」

「───────」

「碧依」

「は‥はいっ」





緊張しとるんか、うわずった声で返事が返ってきた。





「──初めてやんなぁ、お前の事名前で呼んだんは」

「───────」

「碧依?」

「‥‥‥すいません、何か‥」

「泣い‥とる?」

「違うんです、嫌とかそういう訳じゃ全然なくて‥‥‥」

「──分かっとる分かっとる。嬉しいんやろ?」





オレ達はいつもいつも、悲しゅうて泣くんやない。





嬉しい時かて、泣いてまうもんや。





──分かっとるで。





お前が今泣いとるんは、嬉しいからなんやて。

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