《MUMEI》 「止まりなさい高柳樹君!」 凜とした声。反射的に足を止めた。 「あ……井上先輩。」 樹は止まったことを後悔する。 美穂との会話が、思い付くはずもなく長い沈黙が続いた。 後ろからもう一人もやってくる。 「妹よ。いいでしょう?」 美穂は妹と思しき頬を撫でて、また接吻した。 井上美穂の言葉を半分も理解せずに樹は頷いておく。 美穂はあまり化粧っ気がないが、妹は随分塗っている。でも美しいことだけはフードの下でも読み取れた。 「内緒よ。 ……貴方もしたい?」 美穂の発言に縦に横にと首振り人形と化す。 「あの、先輩は昔どの辺りに住んでいましたか?」 ここで会ったも何かの縁だ、と聞いてみた。 前へ |次へ |
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